暁と夕の詩

立原道造

暁と夕の詩書籍情報

底本:「立原道造全集 第1卷 詩集1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」角川書店
   1971(昭和46)年6月20日初版発行
入力:八巻美恵
1997年9月11日公開

暁と夕の詩 9

立原道造

 ※(ローマ数字9、1-13-29) さまよひ


夜だ――すべての窓に 燈はうばはれ
道が そればかり ほのかに明く かぎりなく
つづいてゐる……それの上を行くのは
僕だ ただひとり ひとりきり 何ものをもとめるとなく

月は とうに沈みゆき あれらの
やさしい音楽のやうに 微風もなかつたのに
ゆらいでゐた景色らも 夢と一しよに消えた
僕は ただ 眠りのなかに より深い眠りを忘却を追ふ……

いままた すべての愛情が僕に注がれるとしたら
それを 僕の掌はささへるに あまりにうすく
それの重みに よろめきたふれるにはもう涸ききつた!

朝やけよ!早く来い――眠りよ!覚めよ……
つめたい灰の霧にとざされ 僕らを凍らす 粗い日が
訪れるとき さまよふ夜よ 夢よ ただ悔恨ばかりに!
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