立原道造
底本:「立原道造全集 第1卷 詩集1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」角川書店
1971(昭和46)年6月20日初版発行
入力:八巻美恵
1997年9月11日公開
立原道造
※(ローマ数字5、1-13-25) 真冬の夜の雨に
あれらはどこに行つてしまつたか?
なんにも持つてゐなかつたのに
みんな とうになくなつてゐる
どこか とほく 知らない場所へ
真冬の雨の夜は うたつてゐる
待つてゐた時とかはらぬ調子で
しかし帰りはしないその調子で
とほく とほい 知らない場所で
なくなつたものの名前を 耐へがたい
つめたいひとつ繰りかへしで――
それさへ 僕は 耳をおほふ
時のあちらに あの青空の明るいこと!
その望みばかりのこされた とは なぜいはう
だれとも知らない その人の瞳の底に?
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