立原道造
底本:「立原道造全集 第1卷 詩集1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」角川書店
1971(昭和46)年6月20日初版発行
入力:八巻美恵
1997年9月11日公開
立原道造
※(ローマ数字4、1-13-24) 眠りの誘ひ
おやすみ やさしい顔した娘たち
おやすみ やはらかな黒い髪を編んで
おまへらの枕もとに胡桃色にともされた燭台のまはりには
快活な何かが宿つてゐる(世界中はさらさらと粉の雪)
私はいつまでもうたつてゐてあげよう
私はくらい窓の外に さうして窓のうちに
それから 眠りのうちに おまへらの夢のおくに
それから くりかへしくりかへして うたつてゐてあげよう
ともし火のやうに
風のやうに 星のやうに
私の声はひとふしにあちらこちらと……
するとおまへらは 林檎の白い花が咲き
ちひさい緑の実を結び それが快い速さで赤く熟れるのを
短い間に 眠りながら 見たりするであらう
[#改ページ]