暁と夕の詩

立原道造

暁と夕の詩書籍情報

底本:「立原道造全集 第1卷 詩集1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」角川書店
   1971(昭和46)年6月20日初版発行
入力:八巻美恵
1997年9月11日公開

暁と夕の詩 2

立原道造

 ※(ローマ数字2、1-13-22) やがて秋……


やがて 秋が 来るだらう
夕ぐれが親しげに僕らにはなしかけ
樹木が老いた人たちの身ぶりのやうに
あらはなかげをくらく夜の方に投げ

すべてが不確かにゆらいでゐる
かへつてしづかなあさい吐息にやうに……
(昨日でないばかりに それは明日)と
僕らのおもひは ささやきかはすであらう

――秋が かうして かへつて来た
さうして 秋がまた たたずむ と
ゆるしを乞ふ人のやうに……

やがて忘れなかつたことのかたみに
しかし かたみなく 過ぎて行くであらう
秋は……さうして……ふたたびある夕ぐれに――
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