立原道造
底本:「立原道造全集 第1卷 詩集1[#「1」はローマ数字、1-13-21]」角川書店
1971(昭和46)年6月20日初版発行
入力:八巻美恵
1997年9月11日公開
立原道造
※(ローマ数字1、1-13-21) 或る風に寄せて
おまへのことでいつぱいだつた 西風よ
たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に
とざした窗のうすあかりに
さびしい思ひを噛みながら
おぼえてゐた おののきも 顫へも
あれは見知らないものたちだ……
夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て
あれはもう たたまれて 心にかかつてゐる
おまへのうたつた とほい調べだ――
誰がそれを引き出すのだらう 誰が
それを忘れるのだらう……さうして
夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に
そそがれて来るうすやみのなかに
おまへは 西風よ みんななくしてしまつた と
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